医療法人 西さっぽろ病院

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肩の脱臼

肩はなぜ脱臼しやすいのか?

肩がなぜ脱臼しやすいかは、肩の構造をみればわかります。(※図1)
肩関節は大きな上腕骨頭を小さな関節窩が支えている構造をしています。
簡単に言えば小さな皿の上にボールが乗っているような不安定な関節なのです。(※図2)

フィギュア01 フィギュア02

なぜそのような関節になっているかというと、人間の進化に関連します。
四足であった人間が二足歩行をするようになり、前足が体重を支える必要がなくなり、手が自由に使えるようになりました。肩関節は体重をささえるためのしっかりした関節から、動きを重視した関節に進化してきたため現在の構造になったと考えられます。人間の最も優れた機能である手をあらゆる方向に動かすために、肩の関節は人体にあるすべての関節(31関節)の中で最もよく動く関節になりました。
しかし、関節がよく動くということは逆に言えば不安定であるということです。そのため肩ははずれやすいのです。

肩関節は骨の支持が弱いために、靭帯や腱などの軟部組織がしっかりしています。(※図3)
具体的に肩の安定性に関与しているのは、関節内では関節包、関節唇、関節上腕靭帯、上腕二頭筋長頭筋腱です。
さらに関節の外からは関節の周囲を取り巻く腱板が肩関節をしっかり支持しています。

フィギュア03

肩の脱臼とは?

肩は人間の関節の中で最も脱臼しやすい関節です。全脱臼中の50%は肩の脱臼です。
脱臼する方向はほとんどが前方ですが、稀に後に脱臼します。
亜脱臼は完全に脱臼する手前で整復されたもので、基本的には脱臼も亜脱臼も同じケガです。

肩の脱臼、亜脱臼は、活動性の高い若年者(10―20代)に多くみられます。
人との衝突(直達外力)により脱臼することもあれば、転んで手を着くことや手を体の後ろに強制されること(介達外力)によりはずれたりします。したがって、ラグビーやアイスホッケーなどのコンタクトスポーツやスキーやスノーボードといった転倒する競技、手を後ろに強制されることが多い柔道などに多いケガです。

また、はっきりとしたケガがなくても、元々生まれつき関節にゆるみのある人では、さほど大きな外力がかからない動作(重いものを持つ、不意に手を体の後ろにもっていくなど)でも ”ガクッ” と肩がはずれることがあります。この場合は、はずれてもすぐに戻る亜脱臼がほとんどです。

2回以上の脱臼(反復性脱臼・反復性亜脱臼)について

肩が前方に脱臼、亜脱臼すると肩の関節包が破れます。関節包には肩が前にずれないように働く靭帯(前下関節上腕靭帯)が裏打ちされているので、関節包が破れると一緒に靭帯も断裂することになります。

破れた関節包(靭帯)が自然に元のように治れば二度と肩ははずれませんが、残念ながら一度脱臼、亜脱臼すると肩の前方のゆるみが残り、またはずれることが多く “脱臼ぐせ” になります。2回以上肩がはずれると「反復性脱臼」「反復性亜脱臼」という病名になり、手術をしないと治りません。
これは若年者(10-20代)に顕著で、特にスポーツをする人、元々関節がゆるい人は反復性になりやすいので注意が必要です。

肩を上から見た図

フィギュア04

治療方法

2回以上肩がはずれる場合は手術をしないと治りません。
最近では反復性になる前(1回だけの脱臼・亜脱臼)に手術をして治すことも多くなっています。

手術治療

肩が繰り返し脱臼するのは肩の関節内にある前方を支持している靭帯(関節包靭帯)が骨からはがれたことが原因です。このはがれた靭帯を縫合する手術がバンカート法(バンカートの名は考案者の名前)です。

脱臼の手術はバンカート法以外にもたくさんありますが、バンカート法が最も理にかなった手術であり、世界中で行われてきました。バンカート法には、一般的には肩を大きく切開して行う「オープンバンカート法」がありますが、当院では内視鏡を使用した「鏡視下バンカート法」を行っております。

これは、当院の岡村医師が1992年に北海道にはじめて導入した手術法で、手術症例数は1000例を超えており、現在ではほとんどすべての脱臼の手術を「鏡視下バンカート法」で行っています。創が小さく、術後の回復も早いなど、特に肩を使うスポーツ選手には復帰が早いというメリットがあります。

ただし、すべての脱臼の患者様に「鏡視下バンカート法」ができるわけではありません。 脱臼回数が多く靭帯の損傷が強い人、骨欠損が大きい人、激しいスポーツ(ラグビー、アメリカンフットボール、格闘技など)を行う人は、手術後の再発リスクが高いので、より強固な手術「バンカート&ブリストー法」を行う場合があります。

「鏡視下バンカート法」「バンカート&ブリストー法」のどちらの手術方法を選択するかは、術前の診察と検査(レントゲン、MRI、CT)ならびに関節鏡所見で決定します。